Project of カスピ海油田開発事業 先人たちの想いは私たちが未来へとリレーしていく。

エネルギー・化学品カンパニー

山田哲也

岡本秀彰

エネルギー・化学品カンパニー
エネルギー部門
石油・ガス開発部長代行

松永紗由巳

杉山森悟

エネルギー・化学品カンパニー
エネルギー部門
石油・ガス開発部
CIS・中東・米州事業課

アゼルバイジャン領カスピ海沖合に位置するアゼリ・チラグ・グナシリ(通称:ACG) 油田。その三つのブロックからなる大型油田を開発し、さらにそこから産出される原油を地中海まで輸送するバクー・トビリシ・ジェイハン(通称:BTC)パイプラインを建設する。その長さは、1,768kmにも及ぶ。世界のエネルギー供給を支える者たちのドキュメンタリーがここにある。

激動の時代の中での先見の明が
いま大きな事業として動いている

1996年、伊藤忠はアゼルバイジャン共和国領カスピ海海域ACG鉱区の権益3.9205%を取得した(その後2010年に0.3781%を追加取得、現在4.2986%の権益を保有)。現在部長代行という立場でプロジェクトを統轄している山田は、当時のことをこう語る。「今から考えると、伊藤忠は相当チャレンジングな投資をしたのだと思います。当時はロシアが崩壊した直後で紛争が起きたりと不安定な地域であった中、先人たちはよく決断したな、と畏敬の念を抱かずにはいられません。この油田の権利を持っているのは、私たちにとって大きなアドバンテージになっているのですから。」
アゼルバイジャン共和国バクーからグルジア・トビリシを経由し、地中海に面するトルコ共和国・ジェイハンに至る総延長1,768kmの原油パイプライン。このプロジェクトの建設・運営にも伊藤忠は携わっている。山田は続けた。「ACG油田とBTCパイプライン。この二つは兄弟プロジェクトのようなもので、生産した原油を輸送・供給するところにまで私たちは他パートナーと共に手がけています」。大規模な投資プロジェクト。当然関わる人数も多い。伊藤忠の中だけでも、技術・財務・経理・法務などの専門家も含め随時8〜10名ほどの人数が従事する。このプロジェクトの一員として案件を推進しているのが松永だ。「このプロジェクトに参加する前は、他地域の案件を担当していました。
上流プロジェクトを担当した経験を買っていただいたのかとも思うのですが、担当を言い渡されたときは改めて身が引き締まる思いでした。このプロジェクトは部門の大きな収益の柱であり、失敗は許されない。プロジェクト運営のためコンソーシアム内では会議も頻繁にあり、また社内では関係部署の専門家たちとも常日頃から打合せが必要。一方で原油の値段は変動するため、リスクヘッジも行わないといけない。やることが沢山ありすぎて、毎日忙しい日々を送っています」。

私たちの仕事は国を代表しているんだ。
そのプライドを胸に掲げて

このプロジェクトは、国を跨いだ国際コンソーシアムで動いている。プロジェクトの中心となる松永はどのように働いているのだろうか。「月に1~2週はバクー、ロンドンなどに出張しています。日本にいるときも、頻繁に電話会議を行いますが、またこれが大変なのです。世界中にパートナーがいるため、時間を合わせるのが一苦労。これはグローバルで仕事をするときに必ず出てくる問題でもありますね」。上司である山田はこう付け加える。「国際コンソーシアムで動くということは、交渉相手としてその国を代表するスーパーメジャーのプロが出てくるということ。またいろんな人がタッグを組んで出てきます。だから私たちも国を代表しているんだ、という気概をもって交渉に臨む。これは商社パーソンならではの仕事といえるかもしれませんね」。利益を超えたプロジェクトの意義が、垣間見える一言かもしれない。

「商売」のプロフェッショナルであること

プロジェクトはさらに広がりを見せようとしている。山田はさらに続けた。「今は新たなビジネスの可能性について交渉を続けている真っ只中なのです」。交渉の当事者として現場にいる松永もこう語る。「多くのコンソーシアムメンバー内で意見を調整するのは大変な作業です。金額的にも大きな規模の話になるので交渉の中身も非常に細部にまで及びます。スケールの大きな仕事ではありますが、実際の現場は小さなことの積み重ねであり、そこが重要なのです」。交渉における商社の強みとは一体なんなのか。資源だけを専門とする海外のプロフェッショナルと渡り合える理由はどこにあるのか。「このプロジェクトに配属されるまでは、松永は他国の案件に関わっていて、私自身といえば過去には自動車やプラントといったまったく別の分野の事業に関わっていたりしました。そこで培ってきた商売のセンスが私たちには備わっているのです。専門領域に精通した相手と交渉していて、知識に関して負けることはあるかもしれない。だけどもここだという商売のポイントは決して外さない。難しいのですが、それが商社ビジネスの面白いところだと私は思います」。

もっと先の未来に向けて、
先人たちのバトンをつないでいく

2010年3月、伊藤忠は他のコンソーシアムメンバーと共に更なる原油生産量の増加を見込んで、ACG油田プロジェクトへの追加投資を決定した。そして、約4年の年月を経て2014年初頭、カスピ海域最大級のプラットフォームにて原油生産が開始された。松永は未来に向けた自身の夢を語った。「このプロジェクトは30年の中で一つの大きな転換期を迎えています。そこに関われているのは、自分にとって大きな財産だと思います。今、プロジェクトメンバーが行っている交渉の結果が形になるのは、かなり先のことです。私が異動した後も、是非先人たちが繋いできてくれたバトンをいい形で引き継いでいって欲しいと思います。」。今後何十年にも渡るかもしれない壮大なプロジェクトは、いままた大きく舵を取りはじめた。

ひとりの商人、無数の使命