Project of 南フランスのプレミアム油製造・販売事業 世界の食卓に健康とおいしさをバリューチェーンの鍵は欧州にあり

食料カンパニー

藤野 浩章

藤野 浩章

食料カンパニー
食糧部門
油脂・穀物製品部
油脂課長

世良 和久

世良 和久

食料カンパニー
食糧部門
油脂・穀物製品部
油脂課

一般的な植物油よりも高価でありながら、「健康」や「おいしさ」を求める消費者に人気の高いプレミアム油。伊藤忠商事では、世界規模で拡大し続けるプレミアム油市場のリーディングカンパニーとなるべく、果敢な挑戦を行っている。伊藤忠商事が目指しているのは、プレミアム油の原材料の確保から加工・製造、中間流通、リーテイルに至るグローバル・バリューチェーンの構築。この戦略に、プレミアム油市場の一大マーケットである欧州は外せない。それまですでに国内・米国市場を押さえていた伊藤忠商事にとって、欧州は残された最後のピースだった。2015年、そのチャンスが巡ってきた。

食生活の変化とともに
高まる健康志向のニーズを追う

国内におけるプレミアム油の歴史は、1990年代に遡る。お中元やお歳暮など贈答用ギフトとして市場に出始めた。伊藤忠商事では、すでにこの頃から、北米に100%出資子会社OILSEED社を設立するなど、他社に先駆けてプレミアム油の商圏を広げてきた。しかし90年代半ばになると、贈答用ギフト市場も次第に縮小していく。代わって2000年代に沸き起こったのが、普段の生活にプレミアム油を取り入れる健康ブームだった。消費者の食生活が変わり、より健康にいいものを選択するというマインドにシフト。未加工であるというフレッシュさに加え、機能性も高く身体にいいプレミアム油は、日本のみならずアジア全域に亘って急速に市場を形成していった。そんな中、伊藤忠商事が注目したのが、当時あまり知られていなかった「ひまわり油」だ。担当課長としてプレミアム油プロジェクトを率いる藤野は言う。「地産地消が基本の油脂製品において、ひまわり油最大の消費地である欧州に供給拠点を確保することは、従来からの目標でした。特に南フランスはヨーロッパ全土への供給体制があり、港が近いことから海外への出荷という物流面でも優れているんです。」そこで伊藤忠商事が考えたのが、南フランスに本社を構え「ハイオレひまわり油」や「グレープシードオイル」を製造・販売するProvence Huile社(以下「PH社」)への経営参画。同社は、当時、伊藤忠商事との取引を伸ばしていたサプライヤーの1社であった。

あきらめかけたプロジェクトも
時を超えて、想いがつながる

PH社との資本提携の話は、実は2005年頃にも一度あったが、その時は暗礁に乗り上げている。伊藤忠商事を、事業を広げてくれる重要なパートナーとして認めているものの、資本参加は望まないという、このビジネスに強い思い入れのある創業オーナーの意向があってのことだった。それから10年の時が経ち、PH社は世代交代によって新しいオーナーを迎えていた。高まり続けるプレミアム油のニーズに応える体制を構築するべく、伊藤忠商事は再びPH社との交渉を開始した。「新しいオーナーとの交渉の結果、とても前向きに受け止めてくれました。プレミアム油をここまで成長させてきた伊藤忠商事が言うのであれば、一部の資本参加ではなく一定の株を保有して事業をやってほしい、という話になったんです。」食料カンパニーにとっては初めての、フランスでの製造子会社の事業経営。異なる言語や文化の中、経営をまかされることに正直不安もあったという。時間をかけて何度も話し合い、役割分担を明確にし、分厚い電話帳1冊分にもなろうかという契約書を交わして無事に成立。最後はお互いが納得のいく形でパートナーシップを結ぶことができた。「とことん議論を交わしたことでお互いの考え方もわかるようになり、いい結果につながったと思います。最初はハードルが高いと思われていたフランスでの事業経営でしたが、お互いを理解し合えれば、どんな国でもビジネスモデルは特別変わるものではありません。今は生産も販売も順調です。」こうして伊藤忠商事は欧州のプレミアム油市場の一角に、拠点を得た。北米と欧州の2拠点を確保したことで、変動する生産量の影響に対してもバランスの取れた需給調整が可能になった。

広がる可能性に
商人たちは商機を見る

PH社で製造している「ハイオレひまわり油」「グレープシードオイル」をはじめとしたプレミアム油をアジア市場へ展開するべく、販売戦略を担当しているのが世良和久だ。「ここまで急激にプレミアム油市場が伸びているとは、思いもよりませんでした。おいしさだけでなく健康に対する意識は明確で、少量で高価でも良質な油を買いたいというニーズが高まっていることを肌で感じています。特にアジアでの市場の伸びは目を見張るものがあるんです。」欧州の特色あるプレミアム油の製造拠点が加わることになった今回のプロジェクトに、世良は新しい可能性を感じている。その一方で、プレミアム油事業に携わる使命感をより強く意識するようになった。「よりグローバルな視点に立って物事を考えられたことは、既存のビジネスにも大きな意義がありました。今後はプレミアム油をこれまで以上に付加価値の高い商品として世に送り出していくことが求められます。ユーザーから新しい要望を直接汲み取りながら、ビジネスを広げ、アジア全域の健康とおいしさに貢献していきたいですね。」

誰も思い描けなかったマーケットの創造
そして、新たな挑戦へ

念願だった欧州での供給拠点の確保に成功し、安定供給を実現させた今、次にプレミアム油事業が目指すゴールはどこなのか。藤野の想いは熱い。「私が入社した頃、油は差別化や付加価値を生むことが難しい市場だとされていました。しかし今、当時起こるはずがないと思われていた変化が実際に起きている。原料から製品まで携わるからこそできる、プレミアム油のブランド化を目指していきたい。どこまでできるか、ここからがまたチャレンジだと思っています。」決して一人では成し遂げることのできないプロジェクト。世良は、世界中にいる各拠点の仲間たちと協力しあうことが、いかに最大の利益を生み出すかを知っている。「このプレミアム油プロジェクトでも、北米や欧州にいる先輩方と『自分たちのそれぞれの持ち場で全力を尽くそう』と、一致団結して取り組んでいます。いま順調に市場を広げていけるのは、このチームプレイがあったからこそ。この仕事をやらせてもらって幸せだなと思います。」人口減少を迎える日本でも、2000年には1,000億円と言われた家庭用植物油市場が、2025年には1,500億円を超えると言われており、プレミアム油に対するニーズは今後確実に伸長を続けていくことが予想される。世界中のパートナーに向けてニーズにあったものを提供すると同時に、業界のトレンドを作っていく存在になる。挑戦は、まだ始まったばかりだ。

ひとりの商人、無数の使命