Project of グローバルとローカルをつなぐ、金融事業プラットフォーム 地方に商社の風を吹き込み、金融ビジネスの新たなフィールドを創出する

情報・金融カンパニー

岡村 貴史

岡村 貴史

情報・金融カンパニー
金融・保険部門
金融ビジネス部
金融ビジネス第三課長

西野 哲平

世良 和久

株式会社GLコネクト出向
営業部副部長

長年にわたって地域の経済と生活を支えてきた地方銀行が、近年、大きな岐路に立たされている。その背景には、景気低迷と少子化に伴う融資先の減少に加え、顧客の海外進出や事業継承問題など多様化するニーズに対して十分な提案ができないといった機能上の課題がある。伊藤忠商事の関連会社である株式会社GLコネクトが2016年4月から取り組んでいるプロジェクトは、こうした課題の中で突破口を開こうというものだ。伊藤忠商事100%子会社だった同社の株主に、地方銀行をはじめとする金融機関、さらには不動産など専門的な機能を有する事業会社を迎え入れ、それぞれの強みを結合させた新しいプラットフォームをつくろうという日本初のチャレンジ。「GlobalとLocalをつなぐ(Connect)」という意味を込めた社名の通り、企業に対してファイナンスとビジネスソリューションを提供し、地方都市・大都市・海外をつないだビジネスチャンスを創出していく。商人たちを突き動かしたのは、金融事業の将来を見据えた想い。そして、伊藤忠商事における法人向け金融ビジネスでの事業基盤を再構築させたいという熱い想いだった。

世界を襲った金融危機を乗り越えて
魂を込めた新たな挑戦

2000年代後半、世界の金融市場は混乱を極めていた。なかでも影響が大きかったのはリーマン・ショックだ。伊藤忠商事の金融事業も業務領域を大幅に見直し、主力である国内外のリテール金融ビジネスに経営資源を集中する一方で、もう一つの柱であった法人向け金融ビジネスは大幅な縮小を余儀なくされたという苦い過去がある。この変動の時代にまたいつどのような環境変化が起こるかわからないという危機感を持っていたのが、金融ビジネス部の岡村貴史だ。2010年頃、岡村は出向先の投資会社で、地方を回りながら様々な悩みを抱える地方銀行と出会った。「融資先の企業が抱える事業承継問題や海外進出ニーズなど、地方銀行やその取引先だけでは解決が難しいような問題をたくさん抱えていたんです。伊藤忠商事の強みでもあるグローバルなリレーションと商流に絡んだファイナンス機能、そして地方銀行の持つ情報や顧客基盤、これらを統合すれば新しいビジネスチャンスが生まれるはずだ、と感じました。」最初はゴールの定まらないままのスタートではあったが、確固たる信念を持って岡村は走りはじめた。そこには、伊藤忠商事が一度は縮小した、法人向けの金融ビジネスをもう一度何とかしたいという想いもあった。「0から1を生み出すのは非常に苦しい。特に、一度失ったものを取り戻すというのはとても労力がかかります。でも、誰かがやらなければこの先ずっとできないと思ったんです。」

地方銀行の出資という
高いハードル

2013年、伊藤忠商事本社に戻った岡村は、全国の地方銀行を駆け回っていた。一緒に株主となって共同事業をつくろうという方向性は、ニーズを聞いてまわる中で定まってきたものだったという。「地方銀行には、そもそも伊藤忠商事に金融の営業部隊があることすら知らない方も多い。これまで殆ど接点がなかったために最初は、何しに来たの?っていう反応も多かったですね。こういったケースでは、まず自分たちが何者なのか自己紹介をして先方の警戒心を解くことから始めました。そして金融機関としての課題や取引先への対応に関する悩みなどを聞きながら、それに対して私たちが少しでも力になれないでしょうかという話を地道に続けました。最初の感触はどの銀行も、これまで出来なかった新しいことが出来るかもしれないという期待感が大きかったように思います。」しかし、実現までの道のりはそう簡単ではなかった。「このプロジェクトで一番苦労したのは、銀行の出資を募ることでした。それまで身を乗り出して話を聞いてくれたみなさんも、いざ出資となると途端にトーンダウンしてしまうことが多かった。地方銀行にとっては、初めての取り組みでもあるため非常にハードルが高く、チャレンジングな意思決定が必要だったと思います。」会社から定められた期日は2016年3月。それまでに出資してくれる銀行が集まらなければ、計画そのものがゼロになるという崖っぷちのプロジェクトだったが、なんとか地方銀行5行に加え独立系金融機関やその他事業会社の出資を得ることができ、GLコネクトでの共同事業化が決定。漠然とした想いだけで動き始めたプロジェクトは、およそ3年をかけて形になり、実を結んだ。商社・地方銀行・事業会社が集まって、金融事業フィールドで全く新しいことに挑戦する会社として、GLコネクトは新たなスタートを切ったのである。

海外進出のニーズに応える
現場の想い

GLコネクトに出向している西野哲平は、地方銀行との共同事業化が決まる前から社内で既存ビジネスを推進させていた一人だ。このプロジェクトの実現を受け、すでに現場での新しいスキーム作りが始まっている。「地方銀行の顧客が抱える海外展開のニーズは、海外でモノを売りたいという話から、海外で一緒に手を組むパートナー候補を探してほしい、工場建設の用地を探してほしいというものなど多岐に亘ります。それぞれのニーズに応えつつ、まずは一つ、成功事例を作りたいですね。第1号の事例ができれば、そこからさらに様々なビジネスへの展開が期待できます。それからが本番です。」今、海外進出サポートの軸としてフォーカスしているのは“越境EC”だ。海外製の商品をネットで購入し、その商品が国外から配送されるというような、国境を跨いだオンライン上の商取引のことである。今後ますます大きな成長が期待されているマーケットである。日本でも、海外に向けて自社商品を販売したいと考える企業は多いが、地方銀行の顧客の中では越境ECビジネスそのものは、まだあまり浸透していない。「地方銀行を回りながら対象となりそうなお客様に向けてセミナーを開くなど、まずは理解を広げることから始めています。安心して使ってもらえるような一連の仕組みをパートナーと組んで構築していくところです。」地方都市と海外をつなぐビジネスチャンスを創出するプロジェクトは、多くの期待と可能性を秘めて現在進行中である。

その商人は、商売を知る
お金のプロである

金融ビジネスに興味を持って入社する若い社員たちのためにも、実際に法人向け金融ビジネスを行う「現場」を作り上げたかった、と岡村は語る。「今はまだ入り口を作ったに過ぎません。この先も決して簡単ではないし、成功するかどうかは、これからにかかっています。ビジネスは生き物ですから、当初描いていた構想と変わることもあるでしょう。10年後に世の中がどうなっているかは誰にもわからない。だからこそ面白いんです。若手や中堅社員にリテール金融ビジネスと法人向けの金融ビジネスをそれぞれ経験できる環境を作り、個人のレベルアップと組織力の底上げを同時に実現できればと思っています。変化の激しいこの時代に、新しいビジネスモデルは常に求められます。若い方々には失敗を恐れずにチャレンジしてほしいなと思いますね。」商社の中でも、金融というフィールドはイメージしにくいかもしれない。しかし商売にお金は必ずついてまわるもの。商社で働く金融パーソンにしか味わえない仕事の醍醐味もある。現場で顧客と向き合い、プロジェクトを推進する西野も、その面白さを感じている。「金融というと、銀行や証券会社のイメージが強いですよね。でも、どんな仕事にもお金は動いています。仕入れも、物流も、設備投資も、販売も、リスクヘッジの保険も。エンドユーザーもお金でサービスを享受している。商流にまつわるファイナンスに携われるのは商社独特のビジネスです。商売に関わるお金の動きを誰よりも見ていますし、顧客ニーズに向き合う中で自分たちの機能が問われ、ニーズに応えていく中で会社の機能や自分自身の知識・経験が磨かれていくことを実感しています。すごくやりがいがありますね。」世の中の進化は早い。だからこそ、足を止めてはいけない。彼らは、チャレンジをともにする仲間を求めている。

ひとりの商人、無数の使命