食料カンパニー

Project

今後の更なるシナジー創出を目指して

南フランスのプレミアム油製造・販売事業

 
  • 食料カンパニー
  • 油脂・穀物製品部 油脂課長代行
森 広太郎Koutaro Mori
 
  • 食料カンパニー
  • 油脂・穀物製品部 油脂課
保田 洋祐Yousuke Yasuda
2015年9月、フランスの「Provence Huiles(以下PH社)」への出資参画からスタートした「南フランスのプレミアム油製造・販売事業」は、セカンドステージへと駒を進めた。同事業は、世界的な健康志向を追い風にして、付加価値の高い植物油の需要拡大、事業拡大を目指すものだ。出資参画以降、伊藤忠商事ではPH社との協業を進め、PH社の事業戦略・管理体制・システム等をより有機的に機能させるべく、PMI(Post Merger Integration:M&A成立後の統合プロセス)に国内外の社員が一丸となって取り組んでいる。アルゼンチンにあるPH社の子会社「Derivados Vinicos S.A.(以下DVSA)」に初の駐在員として赴任した経験を持つ森と、2019年4月からフランスに赴任する保田に、仕事にかける想いや今後の展望について語ってもらった。
追い風を受けて
投資の効果が明らかになる

近年は健康のために、オリーブ油、エゴマ油といった付加価値の高い植物油を積極的に摂取するのが良いという考え方が定着しつつある。十数年前、オリーブオイルを常備している家庭は少数派だったが、今では日本の多くの家庭に常備されている。こうした状況のなか伊藤忠商事は、健康成分として知られるオレイン酸の含有率が高い「高オレイン酸ひまわり油」に注目した。2015年9月、南仏プロヴァンスなどを拠点に、高オレイン酸ひまわり油やグレープシード油など付加価値の高い植物油を製造・販売しているPH社に出資参画して株式を譲り受け、同社を子会社としたのだ。伊藤忠商事は「川上」にあたる食糧資源の確保、「川中」の加工・製造・中間流通、そして「川下」のリーテイル(小売)に至るグローバル・バリューチェーンの構築を推進していた。

プレミアム植物油の分野における世界市場の中心である欧州での事業拠点の確保は、バリューチェーンの機能強化に大きなメリットがあった。北米、アジアで既に構築されている事業基盤に、欧州、南米を加えることで、世界的な健康志向に対応して、付加価値の高い植物油の安定供給、事業拡大が期待できるからだ。「2019年2月からは日欧経済連携協定(EPA)が発効となり、主要な農産品の関税が徐々に削減・撤廃される予定です。日本に向けてヨーロッパの高オレイン酸ひまわり油やグレープシード油を、よりプロモーションしやすい追い風の状態となるわけです。付加価値の高い植物油を欧州で製造している本事業に投資した価値が今後いっそう高まるはずです」 と、森は自信と期待を見せる。

単なる売買で終わらない
事業投資の仕事のおもしろみ

森はPH社の子会社でアルゼンチンにあるDVSAに、伊藤忠商事からの初の駐在員として赴任した。現地で会社の経営状態をしっかりと把握した上で、ビジネス伸長につながる経営管理体制を構築することを目的として、森が伊藤忠商事からただ一人アルゼンチン・メンドーサに赴任したのだ。「アンデス山脈の麓の小さな街で、アジア人は少なく、日本人は恐らく僕と家族だけという環境でした」(森)。加えて、伊藤忠商事が出資したのはPH社であり、DVSAと伊藤忠商事との間には直接取引がないため、同社内での伊藤忠商事の認知度も低く、伊藤忠商事がどういう会社で、自分が何のためにアルゼンチンにやってきたのかを繰り返し説明する必要があったという。「英語を話せるのは百数十人の従業員のうち5人程度といった状況で、片言のスペイン語でなんとか会話するところからのスタートでした」(森)。

一方、2015年の資本参画後に伊藤忠商事に入社したのが保田だ。現在は投資先企業の決算管理を担当している。3年目にしては荷が重い任務ともいえるが、若手から重要な仕事を経験する機会を積極的に与えるのは伊藤忠商事の特徴でもある。「今回のプロジェクトでいえば、伊藤忠商事はPH社の決算管理をし、PH社は子会社のDVSAを含めた連結決算管理をするので、決算が何段階にもなっており、為替もアルゼンチンペソ、ユーロ、米ドル、円と変わるのでとても複雑です」(保田)。とはいえ、保田は数字を扱うのが得意で、複雑な会計業務はさほど苦にならないようだ。「最初、油脂課に配属された時は、単に油脂を売り買いする部署だと思っていました。もちろんそれは今でも大事な業務のひとつですが、投資した会社を運営する仕事の割合がかなり高く、単純に商品を「売った、買った」ではなく、「投資して、運営していく」というおもしろみを知りました」(保田)。

いろいろな仕事を通して
物事を多角的に捉える

伊藤忠商事の社員は世界各地に駐在している。それぞれの土地で、確固とした信念を持ってビジネスに取り組んでいることから、時には激しく意見がぶつかることもある。それでも、チームで喜びを共有できるところがこの仕事の醍醐味であり、いまは一丸となって同じ目標に向かって進んでいこうとしていると森は言う。「DVSAの社員の間でも、初めは伊藤忠商事が新たに経営に参画したことに対する不安・反発がありました。それでも、しっかりとしたコミュニケーションを取って相互理解を深めることが大切だと信じて取り組みました」(森)。地道なコミュニケーションを続けた結果、DVSAは伊藤忠商事が求める管理手法を予定より前倒しで構築し、さらに資金調達方法等を見直し、大型の設備投資を実行した。今期はこうした取り組みも功を奏して、業績が向上している。「若い時からチャンスをいただき、グループ会社の経営に携わることができました。社内外の方々の力を借りながら、自ら考えた施策が実行され、良い結果に繋がっていることには素直に喜びを感じています」(森)。

森のような海外経験はまだないものの、保田は海外と東京との繋ぎ目としての役割を果たしている。まだ知らないことも多いが、「上司に言われたからこうします」という姿勢では、周囲が不安になると考えている。また、相互理解が不十分なままでは複雑な決算管理などが余計に非効率となりグループ全体に大きな負担をかけてしまうことがある。時には、現地スタッフに対して毅然とした態度で臨むこともある。「いまは経営の仕事の一端を担わせていただき、とても勉強になっていますが、投資や財務会計にも精通する必要があります。現地駐在ともなると自ら仕事をマネージしていく能力も求められるので、やりがいがある仕事です」(保田)。油脂課への配属が決まったときには、担当する商材のイメージから「狭い世界の仕事」だと想像していたが、いろいろな仕事を通じて多角的に油脂の業界を見ることができ、仕事の奥深さを実感しているそうだ。

仕事に熱く取り組み
チャンスをものにする

森は現在、高オレイン酸ひまわり油やグレープシード油など、PH社製品の対日向け販売を担当している。世界規模で高まる健康志向、日欧経済連携協定(EPA)といった追い風を利用しながら、製品に対する認知度アップのために国内のメーカーと一緒に試行錯誤している。「PH社への出資参画を実行した先輩方が予見していた通り、日本でも付加価値の高いプレミアム植物油の需要が拡大するチャンスが訪れています。引き継いだ襷を次につなげていけるように、結果を出していきたいと思います」(森)。

欧州に拠点がある植物油メーカーをグループに擁するという当社の強みを活かして、安心・安全な植物油を日本の消費者に提供し、事業をさらに拡大させていくことが、これからのミッションだ。「ここ数年のオリーブオイルの普及を見てもわかるように、時代が変われば価値観も変わりますので、プレミアム植物油の市場が拡大する可能性は十分にあると思います」(保田)。駐在員を務めていた頃、森は現場で何が必要かを判断し、自分の感覚を信じて行動し、結果を出してきた。こうしたビジネス感覚を維持するためには、鋭い洞察力や創造性が求められる為、自己研鑽を欠かさない。

先輩社員から襷を受け取った保田は、2019年4月からフランスPH社へ赴任する。「駐在先では伊藤忠商事の社員は少数派で現地社員と一緒に仕事をする機会が多くなりますので、周囲としっかりとコミュニケーションを取り仕事をしたいと考えています」(保田)。長期的な目標としては先輩社員のように、投資の仕事にトライすることだという。伊藤忠商事には、若手から海外で挑戦させる風土があるという。「将来的には自分で新しいビジネスを創りたいですね。仕事に熱く、生き生きと働いている先輩社員が多く、情熱と実現性のあるビジネスプランがあれば若手でもチャンスをもらえる会社ですから」(保田)。